【大学院ゼミ/1限】「教養」に関する比較教育的研究 第4回

1.「新しい時代における教養教育の在り方について」の背景
□初等・中等教育
・新学習指導要領の施行(2002.4-)
→諮問理由として,「生きる力」との整合性
□大学教育
・1991年の大学設置基準大綱化以降の流れの軌道修正
・FD議論の加速

2.「新しい時代における教養教育の在り方について」以降の流れ
□初等・中等教育
・教育基本法・学校基本法改正(2006)
□大学教育
・大学設置基準改正
→FDの努力義務化・義務化

3.次回までの課題
答申に加え,議事録を見て,各自の課題意識から答申を分析
→教養研究に関するサブ・テーマを挙げていく

【大学院ゼミ/1限】「教養」に関する比較教育的研究 第3回

1.『ビジネスパーソンのための教養大全』を読んでの論点
□「立場と年代によって変わる教養ニーズ」という考え方
・本当に「今」知るべきものか?結局古い教養観なのでは?
→年代別の教養観が提示されているが、以降の議論のベースは「経営者」≒50代
・こうした教養観がどのように成立したのか?
・教養を得る目的は?
→本書では「ビジネスに使える知識」に収斂?

□教養として挙げられている項目について
・分類方法が系統だっていない
・「教養が足りない」と感じる人の「教養」観からスタートして良いのか?
・他国や別の時代ではどうか?ジェンダー的な視点が入るとどうなるか?

□本書における「教養」観
・「教養」≒知識?
⇔大正教養主義における人生観のための教養のあり方
→戦後の大学における「教養科目」(=一般教育科目)とは別物
・「教養」の獲得≒本を読む
→ある種伝統的な教養観

2.今後の展開案
□この『教養大全』が書かれるに至った背景・文脈を探る
・竹内洋『教養主義の没落』を読み、この議論の延長線上に『教養大全』を置く
→「教養」から「キョウヨウ」へ、という議論
・吉田文『大学と教養教育』:大学カリキュラムの根無し草状態、知の断片化
→これに対する反感として、『教養大全』があるのでは?

□「教養≒知識」という考え方に対する反論
・大正教養主義的な、人生観を含む教養のあり方を再考すべき
→大正教養主義における、「読者」は誰か?
→主に旧制高校・帝大学生?

□ビジネス界での教養と、学校教育での「教養」の差異の検討
・中教審2002「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」と、『教養大全』の比較

3.今後の課題
□次週(5/9):中教審「新しい時代における教養教育の在り方について(答申)」(2002)を講読(折田さん発表)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/020203.htm
・『教養大全』との教養観の比較
・これと照らして、各自の「教養」に対する考え方をまとめる
・可能であれば、竹内洋『教養主義の没落』をどのように読むかも考えておく

□次々週(5/16):竹内洋『教養主義の没落』(中央公論新社, 2003)を講読
・各自入手し、5/16までに読んでおくこと

【大学院ゼミ/1限】「教養」に関する比較教育的研究 第2回

1. 間篠・原による研究デザインの提案

□先週紹介した各自の研究関心を基に,地域・時代別にグループ分け

□春学期は各グループから共通文献を出し合い,講読していく

 

2. 提案に対する意見

□グループを分ける前に共通認識を深める必要がある

□これまでの「教養」研究の枠組みに囚われかねない

→最近の一般的な「教養」観をまず見ることを提案

 

3. 次回の課題

□『ビジネスパーソンのための教養大全』(日経BPムック,2013)を読んだうえで,各自の研究関心の明確化と,当面のグループ分けの素案を全員がそれぞれ作成してくる

□加藤・櫻間がまず発表

□発表は,文献を読んだ上での自信の研究関心や今後やるべきことについて行う。指定文献の要約などは不要。

□間篠・原で研究計画の練り直し

【大学院ゼミ/2限】2014年度春学期・日程

As of Apr. 11, 2014

04/18 原
04/25 嶋田・田中
05/02 久保田・井上
05/09 間篠・加藤
05/16 原・中村
05/23 藤本
05/30 久保田  ※補講日
06/06 富塚・寥
06/13 間篠・井上
06/20 原・的場
06/27 久保田・加藤
07/04 岸本・夏・田中
07/11 山田・中村・嶋田・寥  ※要調整
07/18 藤本・間篠・原

変更等が発生した場合は,各自で調整のうえ,ML等で連絡してください。

トマス・クラップのカレッジ・カリキュラム論(原)

秋学期初回ゼミにて検討していただく予定の論文です。

10月14日の教育史学会にて発表したのち,社会学研究科紀要への投稿を検討しています。

時間の都合上,事前にお読みいただき,コメント等を準備していただきますようお願いいたします。

トマス・クラップのカレッジ・カリキュラム論(原)

D2 原

「学識」研究の論点と文献(中村)

『大学の自治』田中耕太郎、末川博、我妻栄、大内兵衛、宮沢俊義 朝日新聞社1963
大学の自治という観点から、大学教員の在り方を考えることもできるとおもい、挙げてみました。本書は座談会形式で、過去の事件(戦前の七博士事件以降)を振り返っているため、厳密性に問題があるかもしれませんが、各事件の同時代人がどう受けとめていたかを知ることができるという点では、利点もあるかとおもいます。全員で読み進めるのに耐え得ないかもしれませんが、「大学の自治」という問題を概観するには資するところがないとは言えないかとおもいました。また、下記の本は、本書で取り上げられた事件について詳しく述べられています。
伊ヶ崎暁生『大学自治の歴史』新日本新書 1965

「学識」研究の論点(やまだ)

天野郁夫著『日本的大学像を求めて』(1991)

「日本的」というところが気になりました。問題設定の妥当性についてはわかりませんが、内容がとてもわかりやすく整理されているので論点を探るには適しているかと思われます。

第一章 変わりゆく大学
マス化の衝撃/大学と国家/企業と大学/社会と大学/大学と学校/組織と管理/教育と研究/分化と序列化/アメリカのモデル性/競争と多様性

第二章 アメリカと日本
比較と歴史と/私学とアメリカ/官学とドイツ/アメリカ・モデル/カレッジとユニバーシティ/三位一体型/州立大学/アメリカ的性格/戦後改革のモデル/正しい認識を

「学識」研究の論点と文献(間篠)

1.モード論について
今日の議論の前までは、現代的な問題をもう一度見てみるのも良いのかなと思っていました。その意味で、今まで読んだ文献の中でも何度か引かれていましたが、マイケル・ギボンズ『現代社会と知の創造――モード論とは何か』(丸善、1997年)をとりあげます。どちらかというと論点をあげて、というよりは勉強という意味が強いのですが。読むとしたら序章と第一章で概要をつかむのが良いかと思います。余裕があれば第三章・第七章も。以下、同書の構成です。
・序章
・第一章 知識生産の進化
・第二章 知識の市場性と商業化
・第三章 研究のマス化と教育のマス化
・第四章 人文科学の場合
・第五章 競争、コラボレーション、グローバル化
・第六章 制度を再配置する
・第七章 社会的に分散した知識のマネジメントに向けて

2.ドイツにおけるWissenschaft(学問/科学)に関連させて
今日の議論で出てきたWissenschaftをもう少し掘り下げるための文献として、F.K.リンガー著、西村稔訳『読書人の没落』(名古屋大学出版会、1991年)をあげてみます。(パレチェクの主張に基づいて)「フンボルト理念」が1910年に再発見されたのだとすると、“Bildung durch Wissenschaft”と言ったときのWissenschaftがどのようなものとして理解されたのか、気になります。特に、価値の問題をどう扱われたのかが大きな問題になるのではないかと思います。そこで、20世紀への世紀転換期におけるドイツの思想状況を確認するということで、同書を取りあげました。何章かに絞って読むとすると、第一章ないし第六章が良いかなと思います。以下、同書の構成です。
・序説 読書人の類型
・第一章 読書人の社会史
・第二章 懐旧の読書人階層
・第三章 政治論と社会理論 一八九〇年―一九一八年
・第四章 政治的対立の絶頂 一九一八年―一九三三年
・第五章 文化的危機の起源 一八九〇年―一九二〇年
・第六章 学問の復活から危機へ 一八九一年―一九二〇年
・第七章 学問の危機の頂点 一九二〇年―一九三三年
・結章 伝統の終焉

以上

「学識」に関する比較調査 図書リスト(富塚)

大学における「知識」とはなにか、という観点から図書を挙げてみようと思います。

当初、「知識」の機能や性質についてみてみたら面白いかな、と思ったのですが、観点が絞れなかったので、ひとまず「知識とはなにか」という包括的なくくりにしました。

・ヤーロスラフ・ペリカン著・田口孝夫訳『大学とは何か』、法政大学出版局、1996年.

第二部に知識に関する章が複数あります。

第7章「大学の任務」、第8章「研究による知識の進歩」、第9章「教育による知識の拡大」、第10章「知識と職業的技能との関連」、(第11章「死者の才能の防腐保存」)、第12章「出版による知識の普及」。

 

・スティーヴ・フラー著、永田晃也、遠藤温、篠崎香織、綾部広則訳『ナレッジマネジメントの思想 知識生産と社会的認識論』、新曜社、2009年.

著者の主要な関心は大学。「マネジメントの考え方が知識に対して何の役に立つのかと問う(7頁)」とのことですが、「知識」について多く頁が割かれており、大学における「知識」を考えるうえで役立つのでは…と考えました。

前篇を通して触れていますが、とくに第二章「知識を問題にする–哲学、経済学、法律」が参考になるのではないかと思います。

 

以上です。よろしくお願い致します。

富塚

「学識」に関する比較研究 図書リスト(原)

1. 南原繁,『大學の自由』(東京大學出版會,1952)

南原に関する二次文献を探していたのですが,大学論・学問論に特化したものが見当たらず…。どうもこの分野ではあまり研究されていない人物のようなので,せっかくなのでいきなり一次文献からあたってみるのもありかなと思います。119ページですが,1ページに12行ほどしかない文庫サイズのものですので,すぐ読めるかと思います。

まだ上記1点しか挙がっていませんが,ほかによさそうなものが見つかりましたら追加します。