「学識」研究の論点と文献(間篠)

1.モード論について
今日の議論の前までは、現代的な問題をもう一度見てみるのも良いのかなと思っていました。その意味で、今まで読んだ文献の中でも何度か引かれていましたが、マイケル・ギボンズ『現代社会と知の創造――モード論とは何か』(丸善、1997年)をとりあげます。どちらかというと論点をあげて、というよりは勉強という意味が強いのですが。読むとしたら序章と第一章で概要をつかむのが良いかと思います。余裕があれば第三章・第七章も。以下、同書の構成です。
・序章
・第一章 知識生産の進化
・第二章 知識の市場性と商業化
・第三章 研究のマス化と教育のマス化
・第四章 人文科学の場合
・第五章 競争、コラボレーション、グローバル化
・第六章 制度を再配置する
・第七章 社会的に分散した知識のマネジメントに向けて

2.ドイツにおけるWissenschaft(学問/科学)に関連させて
今日の議論で出てきたWissenschaftをもう少し掘り下げるための文献として、F.K.リンガー著、西村稔訳『読書人の没落』(名古屋大学出版会、1991年)をあげてみます。(パレチェクの主張に基づいて)「フンボルト理念」が1910年に再発見されたのだとすると、“Bildung durch Wissenschaft”と言ったときのWissenschaftがどのようなものとして理解されたのか、気になります。特に、価値の問題をどう扱われたのかが大きな問題になるのではないかと思います。そこで、20世紀への世紀転換期におけるドイツの思想状況を確認するということで、同書を取りあげました。何章かに絞って読むとすると、第一章ないし第六章が良いかなと思います。以下、同書の構成です。
・序説 読書人の類型
・第一章 読書人の社会史
・第二章 懐旧の読書人階層
・第三章 政治論と社会理論 一八九〇年―一九一八年
・第四章 政治的対立の絶頂 一九一八年―一九三三年
・第五章 文化的危機の起源 一八九〇年―一九二〇年
・第六章 学問の復活から危機へ 一八九一年―一九二〇年
・第七章 学問の危機の頂点 一九二〇年―一九三三年
・結章 伝統の終焉

以上

「学識」に関する比較研究 文献調査(間篠)

「学識」という言葉にこだわらず、「大学における知」をテーマに下記3冊をとりあげます。

・吉見俊哉『大学とは何か』岩波書店、2011年。
明治期の日本の大学を考えたときの、基本文献というか、導入のための文献として、第Ⅲ章「学知を移植する帝国」を挙げます(全員で検討するというよりは、読んでおく、というだけでもよいかなと思います)。ここに書かれていたアカデミズムとジャーナリズムの乖離や合一の問題を突っ込んで検討していくのも、大学における知を考える上で有意義なのではないかと思います。

・竹内洋『大衆モダニズムの夢の跡――彷徨する「教養」と大学』新曜社、2001年。
大衆化の中で「大学」や「教養」が憧れの対象ではなくなり色あせていく様を描いています。特に第3章にあたる「大学の迷走と知の転換」が今回のテーマに合致するかと思います。「学識」という言葉からは少し離れてしまうかもしれませんが、「学識」を突っ込んで検討しようとした場合、「教養」の問題は避けられないだろうと思い、挙げてみました。

・マックス・ウェーバー(尾高邦雄訳)『職業としての学問』岩波書店、1980年。
「大学における知」を考える際、「教養」と同様に「学問」も重要な意味を持ってくると思います。「学問」を考えるための基本文献として、挙げてみます。文庫本であり、あまり長くもありませんし、共通に読んでおくものとしてよいかなと。なお、2009年にはプレジデント社から三浦展訳が、日経BP社から中山元訳が、それぞれ刊行されています。

以上です。

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究24 先行研究・文献のまとめ(間篠)

<Post-Boyerのscholarship論に関する先行研究>

・Boyerを足がかりに大学教授について論ずるもの(Boyer(1990)の紹介を含む)

坂井, 昭宏. 2011. “教育=研究一体性論の再検討―大学教員のアイデンティティ―.” 桜美林論考.人文研究 2: 17-30.

寺崎, 昌男. 2005. “大学焦眉の課題と教員の役割―専門職化と新しい課題―.” RIHE 83: 39-53.

絹川, 正吉. 2006. “研究大学における教養教育.” 名古屋高等教育研究 (6): 171-194.

飯吉, 弘子. 2007. “教育と研究の「古典的葛藤」を超える道–先行研究の整理と問題提起.” 大学教育学会誌 29 (2): 46-52.

鳥居, 朋子. 2007. “学識としての教育のとらえ直しと教師集団による組織的な教育実践の改善―米国インディアナ大学におけるScholarship of Teaching and Learning(SOTL) ―.” RIHE 91: 39-47.

別府,昭郎. 2005. 大学教授の職業倫理. 東信堂.

有本,章. 2005. 大学教授とFD―アメリカと日本―. 東信堂.

 

・日本におけるSoTL研究(SoTLの紹介含む)

吉良, 直. 2010. “米国大学のCASTLプログラムに関する研究―3教授の実践の比較考察からの示唆―.” 名古屋高等教育研究 (10): 97-116.

鳥居, 朋子. 2007. “学識としての教育のとらえ直しと教師集団による組織的な教育実践の改善―米国インディアナ大学におけるScholarship of Teaching and Learning(SOTL) ―.” RIHE 91: 39-47.

飯吉, 透. 2002. “カーネギー財団の試み―知的テクノロジーと教授実践の改善(上).” アルカディア学報 (66).

中島, 英博. 2006. “カーネギー財団における Scholarship of Teaching の変遷.” In 学生・教師の満足度を高めるためのFD組織化の方法論に関する調査研究, edited by 達也 夏目, 161-165: 名古屋大学高等教育研究センター.

 

・日本におけるSoE研究(SoEの紹介含む)

村上, むつ子. 2011a. “サービス・ラーニングの新しい潮流 <上> 「学問性」と「社会との関わり」.” 教育学術新聞 (2432).

———. 2011b. “サービス・ラーニングの新しい潮流 <下> 「学問性」と「社会との関わり」.” 教育学術新聞 (2435).

堀田, のぞみ. 2012. 研究とアウトリーチ活動─米国における大学・科学コミュニティの取組み─. In 国による研究開発の推進―大学・公的研究機関を中心に― 科学技術に関する調査プロジェクト : 調査報告書., ed. 国立国会図書館調査及び立法考査局, 243-251国立国会図書館調査及び立法考査局.

 

・海外におけるscholaraship研究(Boyer(1990)検討を含む)

Braxton, John M., William Thomas Luckey, and Patricia Helland. 2002. Institutionalizing a Broader View of Scholarship through Boyer’s Four Domains. San Francisco, CA: Jossey-Bass.

Paulsen, Michael B. and Kenneth A. Feldman. 1995. “Toward a Reconceptualization of Scholarship: A Human Action System with Functional Imperatives.” Journal of Higher Education 66 (6): 615-640.

Rice, R. Eugene. 2005. “Scholarship reconsidered”: History and context. In Faculty priorities reconsidered : Rewarding multiple forms of scholarship., eds. KerryAnn O’Meara, R. Eugene Rice, 17-31. San Francisco: Jossey-Bass.

———. 2005. The future of the scholarly work of faculty. In Faculty priorities reconsidered : Rewarding multiple forms of scholarship., eds. KerryAnn O’Meara, R. Eugene Rice, 303-312. San Francisco: Jossey-Bass.

———. 2002. Beyond scholarship reconsidered: Toward an enlarged vision of the scholarly work of faculty members. New Directions for Teaching and Learning 90: 7-17.

———. 1991. Toward a broader conception of scholarship: The american context. In Research and higher education : The united kingdom and the united states., eds. Thomas G. Whiston , Roger L. Geiger . Buckingham; Bristol, PA, USA: Society for Research into Higher Education & Open University Press.

Schön, Donald A. 1995. “The New Scholarship Requires a New Epistemology.” Change 27 (6): 26-34.

 

・SoTLを中心としたscholarship

Boshier, Roger. 2009. “Why is the Scholarship of Teaching and Learning such a Hard Sell?” Higher Education Research and Development 28 (1): 1-15.

Rice, R. Eugene. 2005. “”Scholarship Reconsidered”: History and Context.” In Faculty Priorities Reconsidered : Rewarding Multiple Forms of Scholarship, edited by KerryAnn O’Meara and R. Eugene Rice, 17-31. San Francisco: Jossey-Bass.

Hutchings, Pat and Lee S. Shulman. 1999. “The Scholarship of Teaching: New Elaborations, New Developments.” Change 31 (5): 10-15.

 

・SoEを中心としたscholarship

Rice, R. Eugene. 2002. Beyond scholarship reconsidered: Toward an enlarged vision of the scholarly work of faculty members. New Directions for Teaching and Learning 90: 7-17.

それが発展の「契機」(Tipping Point)か危険をはらんだ「山盛りの皿」(Overloaded Plate)かは置いておくとしても、Boyer(1990)は大学のファカルティが発展するための多くの変化のうちの一つとして位置づけることができると指摘している。ここでSoEは、scholarship of applicationの発展形として位置づけられている。

Barker, Derek. 2004. The scholarship of engagement: A taxonomy of five emerging practices. Journal of Higher Education Outreach and Engagement 9 (2): 123-37.

SoEの特徴を、①伝統的スカラーシップの諸側面の横断、②コミュニティとの協働による研究の厳密化、③コミュニティとの相互的な知の産出、にあるとした上で、その発言の形を5つに分類している。Scholarship of applicationの発展としてSoEを捉えるRiceとは考え方が異なる。

Colbeck, Carol L., and Patty Wharton Michael. 2006. The public scholarship: Reintegrating boyer’s four domains. New Directions for Institutional Research New Directions for Institutional Research 129: 7-19.

大学教授職の使命を、奉仕/応用/エンゲージメント、発見/研究、ティーチング/ラーニングの3つのグループに分ける。そして、これらを再統合するものとしてpublic sholarshipを提起している。ここではエンゲージメントは他の側面と同レベルのものとして理解される。ただ、筆者の中心的な関心は、研究やティーチングに比べて奉仕が重視されていない傾向にあるという点にある。この点を踏まえると、奉仕を拡大させつつscholarshipの各側面を統合しようという議論だと理解することができ、SoEの派生形(表現を変えたもの)として考えることができる。

Giles Jr., Dwight E. 2008. Understanding an emerging field of scholarship: Toward a research agenda for engaged, public scholarship. Journal of Higher Education Outreach and Engagement 12 (2): 97-106.

今 はSoEのもとに様々な活動があるが、明確な「大テント」をつくれる段階にはなく、無理に統一しようとするとSandmanのいう「definitional anarchy」の状態になってしまう。だた、「大テント」ができるとすれば、そこにサービス・ラーニングは含まれる。もう一度サービス・ラーニングに注目して議 論を行っていくべき、というのがGilesの意見。4つのスカラーシップの関係については言及していないが、スカラーシップを拡大したことでどこまでがスカラーシップなのかということが不明瞭になっている、ということがここから言えそう。

 

 

<背景を検討するうえで必要となりそうな資料>

・全体的に

有本, 章. 2011. 変貌する世界の大学教授職. 玉川大学出版部.

橋本, 鉱市. 2001. アメリカにおける大学教員―90年代の変容を中心として―. 学位研究(15) (11): 25-37.

 

・SoTLについて

Huber, Mary Taylor, and Sherwyn P. Morreale. 2002. Disciplinary styles in the scholarship of teaching and learning: Exploring common ground. Menlo Park, CA; Washington, DC: Carnegie Foundation for the Advancement of Teaching ; American Association for Higher Education.

 

・SoEについて

Jacoby, Barbara. 2009. Civic engagement in today’s higher education : An overview. In Civic engagement in higher education : Concepts and practices., eds. Barbara Jacoby and Associates, 5-30. San Francisco, CA: Jossey-Bass.

 

以上

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究23(1/18)議事録(間篠 )

前回の議論

<1章・はじめにに関する議論>

・実態を扱った『変貌する世界の大学教授職』に対し、本研究は理念や考える上での枠組みについて研究を行う。

・1990年までの背景と1990年以降の背景との間に決定的な大きな違いは描かない。1990年当時の状況が進行したものとして背景を描く。

 

<全体に関する議論>

・SoTLもSoEも州立大学中心に議論されているようだが、第2・3節を書き改める際にもう一度確認する必要がある。

・『変貌する世界の大学教授職』をもう一度検討し直す必要がある。

・SoTLやSoEの節については、それぞれがBoyer(1990)の提示した4つのscholarshipをどのように再構成しようとしているかを論ずる必要がある。

・上記の点に取り組む場合、Boyer(1990)の問題点をPost-Boyerの論者がどのように克服しようとしていた(している)のかという点についても言及すること。

 

<今後について>

・次回のミーティング

2月4日 14:00~ 研究室棟第四会議室

・次回までの作業

・今回と前回の議論を踏まえた上で各パートを書き直す。

・各節の分野について、日本語の先行研究(特に図書、論文集)を再度確認する。

以上

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究20(12/21)議事録(間篠 )

<論の方向性>

・日本におけるBoyer理解、scholarship論理解を更新することを目的とする

(海外の先行研究を乗り越えることも考えるが、まずは日本の先行研究を乗り越える)

・1つのscholarshipに限定して論ずるのではなく、scholarship論全体の流れを追う

・Boyerの主張としては「威厳ある多様性」を重視する

 

<論の構成案>

・はじめに

先行研究検討(日本において、海外において)

課題設定(Boyer以降のscholarship理解の変化、scholarshipを今後どうとらえるか)

・1.Boyerによるscholarship論

概要を描写し、問題点を指摘する

4つのscholarshipの関係性の不明瞭

Scholarship of teachingの曖昧さ

・2.Scholarship of Teaching and Learningの展開

SoTからSoTLへの展開を説明

SoTLを中心とした場合の4つのscholarshipの構造

SoTL議論の中心:コミュニティ・カレッジ

・3.Scholarship of Engagementの展開

Boyer(1995)の講演の概要を説明

SoEを中心とした場合の4つのscholarshipの構造

SoE議論の中心:州立大学

・4.新しいscholaraship論と従来の大学像・scholarship論との関係

いずれもScholarship of DiscoveryやScholarship of Integrationを中心としたScholarship像を否定してはいない

Boyerの威厳ある多様性を尊重

・おわりに

 

<今後の日程>

1月11日 2節(翟)、3節(塔)

1月18日 はじめに・1節(間篠)、4節(原)

※それぞれの分量については細かく指定しない。(あまりに長くなるようであれば、それで1本書くということもあり。ただ、あまりに短くなるといったことはないように)

 

<その他>

・おわりにについては全体を書き上げた後調整する。

・訳語に関しては後日再度検討する。

※新しいscholarship(SoE, SoTL)については、漢字二文字でない表記を検討

・背景については2・3節で適宜触れ、4節でそれらを総合する。

 

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究18(11/30)議事録(間篠 )

<Post-Boyerのscholarship論>

※O’Meara and Rice(2005)の議論を中心に

・scholarship of teaching and learningは、4つのscholarshipのうち最も発展したものだと理解される。学生のラーニングに焦点を当てるにつれて、scholarship of teachingからscholarship of teaching and learningへと移行した。アセスメント運動など、近年の教育改革プロジェクトにも刺激を受けている。ただし、広く展開することで、SoTLの境界はあいまいとなっている(これが様々な分野を巻き込む「貿易地」を作る可能性にもつながるが)。また、支援や理解を得ることについても、いまだ困難がつきまとっている。

・scholarship of engagementも展開がめざましい。Scholarship of applicationの考え方では、知識は大学やカレッジで産出され、外界に応用されると考えられていた。しかし、大学がコミュニティに奉仕、貢献するという一方向的なモデルに批判が現れるようになり、コミュニティと大学・カレッジとの協働という双方向的なモデルが提案されるにいたった。このため、applicationではなくengagementの言葉が用いられることになる。

・scholarship of discoveryはいまだに大学の活動における中心となっている。特に、職への個人的競争や研究大学間の資金や威信をめぐる競争によって、scholarship of discoveryは重要視される。しかし、application, integration, teachingへの関心も高まっており、discovery一極への関心の集中は崩れてきている。また、1980年のBayh-Dole法以降、産学連携が進み、知識の応用への関心が強まるにしたがって、同一分野内のあるいは多分野の知識を統合する必要性も高まっている。

・scholarship of integrationは、ここ数十年間注目されてきた。それは、既存のディシプリンに適合しない問題を扱わなければならない時代状況によるところが大きい。アメリカの高等教育の伝統的な三つの使命の要素(知識のティーチング、発見、応用)の対立関係を克服するために、scholarship of ingegrationは働く可能性がある。

 

・4つのscholarshipの論者がそれぞれ、自分の主張するscholarshipが他のscholarshipの傘概念になる(あるいは他のscholarship概念とはカテゴリ、レベルが違うものである)と考えている。

 

<議論>

・scholarshipを持つ人の拡大が意図されている一方で、大学教授職の報賞体系は中心的な関心ではなくなってしまっているのではないか。

(scholarshipを持つ人を生み出し、つなげる役割を果たす者として大学教授職は重要な位置を占める。そうすると、大学教授職の報賞体系は結果的に問題になるともいえる)

・Post-Boyerのscholarship論は、Boyer(1990)がとらえきれなかった問題をその範疇に入れている。あくまでscholarship論の視点は知識を持っている側にあるが、見方は変化してきている(engagementやlearningの問題など)。scholarship論は時代に即して展開しているといえるのではないか。

・その時代背景としては、基礎研究―応用研究という枠組みが融解しているという問題が大きいのではないか。1980年のBayh-Dole法、Gibbonsのモード論など、重要な出来事、理論がある。

・4つのscholarship論者がそれぞれ自分のscholarshipを断固として主張することによって、各scholarship(論者)の間に緊張関係が生まれている。しかし、これは見方を変えれば、大学・カレッジの威厳のある多様性を確保し、ライフコースに応じたscholarshipの発揮の仕方を提唱したBoyerの議論をうまく引き継いでいるともいえる。

<12月14日の検討文献>

Sandmann, Lorilee R. 2008.”Conceptualization of the Scholarship of Engagement in Higher Education: A Strategic Review, 1996–2006.” Journal of Higher Education Outreach and Engagement 12(1): 91-104.

 

以上

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究17 1116議事録(間篠 )

<Boyerび知識観、発見の学識について>
・Boyerの考える発見の学識は、Scholarship Reconsidered(1990)以降、変化しているのではないか
・A Community of Scholars(1994)やScholarship Engagement(1995)を読むと、議論が発展しているように思える
Scholarship ReconsideredにはDonald Schönへの直接的な言及はないが、A Community of ScholarsやScholarship EngagementにはSchönへの言及がある(ただし、応用の学識の文脈)
・Boyerは触れていないが、1990年代前半には、社会的な問題を重視ようとする科学研究の枠組みが生まれてきていた(ex.Michael Gibbonsのモード論)
<当日の議論で出た意見>
・Post-Boyerのscholarship論者の中には、従来のdiscipline肯定派と否定派がいるのではないか
・Boyerの4つのscholarshipは、全て目的語にknowledgeを取るものだが、engagementはそうではない。このことから、scholarship of engagementは4つのscholarshipとは性質が異なるものだと考えられるのではないか

・scholarship of engagemetは、scholarship of applicationの発展形と捉えるのではなく、4つのscholarshipを包括するものとして考えるべきではないか

 

<今後の予定>
・これまでの議論を踏まえ、再度Post-Boyerのscholarship論を検討する
11月30日:
・Post-BoyerのScholarship論の全体的な(4つのscholarship全ての)検討
  使用文献:O’Meara, KerryAnn, and R. Eugene Rice. 2005. Faculty priorities reconsidered: rewarding multiple forms of scholarship. San Francisco: Jossey-Bass.の第2章
  発表担当:間篠
・Scholarship of Engagementを検討するための資料の選定
12月7日:
・Scholarship of Teachig and Learningの検討
  使用文献:Hutchings, Pat, Mary Taylor Huber, and Anthony Ciccone. 2011. The scholarship of teaching and learning reconsidered: institutional integration and impact. San Francisco, CA: Jossey-Bass.の第1章
  発表担当:Zhai
12月14日
・Scholarship of Engagementの検討
  使用文献:11月30日に決定
  発表担当:未定
12月21日
・Post-BoyerのScholarship論に関する全体的な討論
・文章化のための構成の検討
以上

 

【大学院ゼミ】ポスト・ボイヤーの大学教授職論研究15 10/12議事録(間篠)

<Boyerの評価について>
・学者個人の使命と大学の使命とを関連させたことにBoyerの特徴があるのではないか
・Donald Schönの主張はBoyerの批判にはならないのではないか
・Before Boyerたちが行ってきたことを整理して、Boyerは自分の主張を展開している
・知識の扱い方という観点でscholarshipを再整理したのがBoyerの特徴ではないか
・1995年の講演(The Scholarship of Engagement)では、市民の視点や社会との関りという視点からscholarshipをとらえ直しているのではないか
・現状を分析し、そこから主張を組み立てているというBoyerの議論のしかたに注意して読んでいく必要がある

<scholarがscholarであることを保証するものとは何か、scholarとは何か>
・職員やadministratorとの違いを考えることでscholarの輪郭を浮き彫りにできないか
・伝統的なキャリアパスを通っていない大学教授職をどのように位置づけるか
・大学教授ではあるが学者ではないという状態はありうるか

<scholarshipについて>
・scholarship of engagementは、scholarship of applicationの発展形としてとらえてよいか(4つのscholarshipを包含したものとして考えられるのではないか)
・Scholarship Reconsideredでは、ティーチングだけが存立基盤が弱い。だからこそ、1995年でscholarship of sharing knowledgeとなっているのではないか。

<間篠の宿題>
・scholarship of discoveryとは何か