「学識」に関する比較研究 文献調査(富塚)

あまり目新しいものはないかもしれませんが、このテーマに取り組むのは初めてということで、どうかご容赦ください。

前提となる事柄が色々とわからないので、現在の高等教育の状況を含めたもの(知ることができそうなもの)を選びました。

・有本章「大学教授職とFD–アメリカと日本」、東信堂、2005年。

ものすごくFDについて論じています。著者もほかの挙げてくださった文献とかぶっていますが、興味があります。

・潮木守一「職業としての大学教授」、中央公論新社、2009年。

大学教員の育成、選抜について、米英仏独日を比較したものです。これらを通して、大学教員がどのような条件をもって「育成された」とみなされるのか、みていけたらと思います。その中で、大学教員の資質・能力に関する言及(「学識」に相当するものはなにか)もできるのではないかなあ、と。

(・「大学改革を成功に導くキーワード30」2013年。3章「教員レベルに関わる10のキーワード」について、興味がありますが、役立ちそうなのかはわかりません。カッコにしておきます)

「学識」に関する比較研究 文献調査(間篠)

「学識」という言葉にこだわらず、「大学における知」をテーマに下記3冊をとりあげます。

・吉見俊哉『大学とは何か』岩波書店、2011年。
明治期の日本の大学を考えたときの、基本文献というか、導入のための文献として、第Ⅲ章「学知を移植する帝国」を挙げます(全員で検討するというよりは、読んでおく、というだけでもよいかなと思います)。ここに書かれていたアカデミズムとジャーナリズムの乖離や合一の問題を突っ込んで検討していくのも、大学における知を考える上で有意義なのではないかと思います。

・竹内洋『大衆モダニズムの夢の跡――彷徨する「教養」と大学』新曜社、2001年。
大衆化の中で「大学」や「教養」が憧れの対象ではなくなり色あせていく様を描いています。特に第3章にあたる「大学の迷走と知の転換」が今回のテーマに合致するかと思います。「学識」という言葉からは少し離れてしまうかもしれませんが、「学識」を突っ込んで検討しようとした場合、「教養」の問題は避けられないだろうと思い、挙げてみました。

・マックス・ウェーバー(尾高邦雄訳)『職業としての学問』岩波書店、1980年。
「大学における知」を考える際、「教養」と同様に「学問」も重要な意味を持ってくると思います。「学問」を考えるための基本文献として、挙げてみます。文庫本であり、あまり長くもありませんし、共通に読んでおくものとしてよいかなと。なお、2009年にはプレジデント社から三浦展訳が、日経BP社から中山元訳が、それぞれ刊行されています。

以上です。

「学識」に関する比較研究 文献調査(原)

今回は以下の3冊を調べました。

・有本章編著.『変貌する日本の大学教授職』.玉川大学出版部.2008.

先週の授業で書名を挙げたものです。単純に”scholarship”の訳語として「学識」を用いている。参考になりそうなのは、序章、「1 研究の視点」内の「大学教授職とは何か」(p.14-)および「6 大学教授職の変化」(p.29-)。特にp.31では、「アメリカでは学識の統合を要請する動きが生じた同じ時期に、日本ではFDの制度化に見られるように、研究と教育を統合する学識観よりも分断する方向への動きが強まった」としている。

 

・岩田弘三.『近代日本の大学教授職』.玉川大学出版部.2011.

こちらも同じく先週の授業で書名を挙げたものですが、制度論中心の内容で、大学教授論・学識論等の概念的問題は扱っていないようです。ただし戦前のことを調べるにあたっては、バックグラウンドを調べる際に有用かと思われます。

 

・寺崎昌男.『大学は歴史の思想で変わる』.東信堂.2006.

有本同様、”scholarship”の訳語として「学識」を充てている。第3章ではBoyerのものも含め4つの大学教授論を紹介しており、「日本に比べ、やはりアメリカにおけるその探求は相当に進んだものである」としている。日本の場合、このような探求が進みうるような社会的背景等の「条件はほとんどなかった」ために、「旧制時代の「大学教授」の歴史的イメージが手つかずのまま残存した」と述べている。第1章・第2章のFD関連の論考も参考になりそう。

 

ひとまず三田にある日本の大学(教員)論関係の蔵書を1/3ほど調べてみたところ、やはり「学識」をテーマに章を割いている書籍も非常に少なく、索引に「学識」という語が出てくることも稀でした。ただ寺崎(2006)にあるように、FD論の文脈で「学識」に触れることは多そうなので、その辺を突っ込んで見るのもありかと思います。まだ全然見れていませんが、ひとまず今日の時点のものをアップします。

D2 原