「学識」に関する比較研究 文献調査(原)

今回は以下の3冊を調べました。

・有本章編著.『変貌する日本の大学教授職』.玉川大学出版部.2008.

先週の授業で書名を挙げたものです。単純に”scholarship”の訳語として「学識」を用いている。参考になりそうなのは、序章、「1 研究の視点」内の「大学教授職とは何か」(p.14-)および「6 大学教授職の変化」(p.29-)。特にp.31では、「アメリカでは学識の統合を要請する動きが生じた同じ時期に、日本ではFDの制度化に見られるように、研究と教育を統合する学識観よりも分断する方向への動きが強まった」としている。

 

・岩田弘三.『近代日本の大学教授職』.玉川大学出版部.2011.

こちらも同じく先週の授業で書名を挙げたものですが、制度論中心の内容で、大学教授論・学識論等の概念的問題は扱っていないようです。ただし戦前のことを調べるにあたっては、バックグラウンドを調べる際に有用かと思われます。

 

・寺崎昌男.『大学は歴史の思想で変わる』.東信堂.2006.

有本同様、”scholarship”の訳語として「学識」を充てている。第3章ではBoyerのものも含め4つの大学教授論を紹介しており、「日本に比べ、やはりアメリカにおけるその探求は相当に進んだものである」としている。日本の場合、このような探求が進みうるような社会的背景等の「条件はほとんどなかった」ために、「旧制時代の「大学教授」の歴史的イメージが手つかずのまま残存した」と述べている。第1章・第2章のFD関連の論考も参考になりそう。

 

ひとまず三田にある日本の大学(教員)論関係の蔵書を1/3ほど調べてみたところ、やはり「学識」をテーマに章を割いている書籍も非常に少なく、索引に「学識」という語が出てくることも稀でした。ただ寺崎(2006)にあるように、FD論の文脈で「学識」に触れることは多そうなので、その辺を突っ込んで見るのもありかと思います。まだ全然見れていませんが、ひとまず今日の時点のものをアップします。

D2 原