今回読んだ文献は、以下の2点。
- Roger Boshier (2009), “Whe Scholarship of Teaching and Learning Such a Hard Sell?,” Higher Education Research & Development 28 no. 1: 1-15.
- M.P. Atkinson (2001), “The Scholarship of Teaching and Learning: Reconceptualizing Scholarship and Transforming the Academy,” Social Forces 79 no. 4: 1217-30.
Boshier論文はPost-Boyerの大学教授論のうち、特にSoTLのその後の展開を追ったReview論文である。Boshierの認識ではSoTLは「売り込みがうまくいかない(hard sell)」な状況にあり、なぜこのような状況が生じたかについて、以下の5つの要因を挙げている(Boshier, 2009, 2)。
- First, scholarship of teaching is used as a synonym for other activities.
- Second, Boyer’s (1990) difinition was conceptually confused.
- Third, it is difficult to operationalize.
- Fourth, much discourse concerning SoTL is anti-intellectual.
- Fifth, there is an over-reliance on peer review.
特に着目したい点は、2点目の「Boyer(1990)の定義における概念的混乱」である。これについてはAtkinson (2001)においても論じられているものであるが、teachingという文脈にはdiscovery, integration, applicationが含まれるというものであり、従って他の3つのscholarshipとscholarship of teachingを並置して定義するのは理論的におかしいというものである。
こうした先行研究における議論を踏まえて、今後の本研究会の論点として以下の点を提示したい。
- Boyerの提示する4つのScholarshipは、要素として独立しうるものなのか、1つの”scholarship”というものを4つの側面から見たものなのか。
- 前者なのだとしたら、BoshierやAtkinsonの批判に対しどのように考えることができるか。
- 後者であった場合、このScholarship of teachingから派生したSoTLを提唱した人物は、この点についてどのように考えているのか。またBoyerはScholarship of teachingを「研究者の養成」に限定していたものと考えられる文面が見られるが(Boyer, 1990)、SoTLないしはBoyerの4つの学識は研究大学以外の大学・カレッジにも適応可能なのか。Post-Boyerの論者はこうした点を議論しているのか。