Rice, R. Eugene. 2005. “Scholarship reconsidered”: History and context. In Faculty priorities reconsidered : Rewarding multiple forms of scholarship., eds. KerryAnn O’Meara, R. Eugene Rice, 17-31. San Francisco: Jossey-Bass.
【内容】
この章では、第二次世界大戦後のアメリカ高等教育の文脈を踏まえて、Scholarship Reconsideredが広い影響力を得たことを論じている。
1960、70年代の高等教育拡大のなか、「発見の学識」が重視されてきたが、「発見の学識」傾倒には疑義も提出されていた。ファカルティの学者としての仕事を再考するということについて、1980~1990年代には、機は熟していた。高等教育を変革しようとする運動は他にもあったが、scholarshipの意味を再定義し、学者個人としての使命と大学の使命との関係についての問いを投げかけたことがScholarship Reconsideredに特徴的である。また、Boyerの提唱した考えが消えないように、AAHEがイニシアチブをとって活動したことも、Scholarship Reconsideredの議論が盛んになった原因の一つであった。
Boyerの提出した4つの学識は、現在では、Scholarship of teaching and learning, engagement, integration and discoveryという4つの学識として議論されている。特に発展したのは以下の二つである。
Scholarship of teachingは、学者の仕事の双方向性・相互関係性を視野に入れるため、scholarship of teaching and learningとして議論されるようになった。その議論の発展には、Boyerの後をついでカーネギー教育振興財団の会長となったLee Shulmanの影響が大きい。彼が中心となってカーネギー財団とAAHEとが協力してCASTLを設立した。
Scholarship of applicationという考え方が提出された際には、知識は大学やカレッジで産出され、外界で応用されると考えられていた。しかし、広い社会(コミュニティ)との協働を重視することから、現在ではscholarship of engagementとして議論されている。
これら4つの学識それぞれについては、次章にて詳しく検討される。
【文献】
・この本のPart1全体
今回読んだのは第一章のみなのですが、4つのscholarshipそれぞれについての議論や、scholarshipに関する変化を阻害する要素などが、Part1の残りの章に含まれています。4つのscholarshipどれか一つだけに絞って議論するのではなく、Boyer後の議論をまとめるという意味で、重要な文献だろうと思います。大学には所蔵がありませんが、間篠が個人的に所有しています。
・Rice, R. Eugene. 1986. The academic profession in transition: Toward a new social fiction. Teaching Sociology 14 (1): 12-23.
今回検討した本のForwardで、Russel Edgertonが、scholarshipという言葉はもともとEugine Riceが発展させたものだと言及していました。そのことについて参考文献は上がっていなかったのですが、おそらくこれがそうだろうと思います。JSTORにPDFがあるようなのですが、なぜか見ることができません。9月末までにもう一度確認しておきます。国内の大学にいくつか所蔵はあるので、web上で見ることができなかった場合でも取寄せてみることが可能です。
・http://teachingphilosophyworkgroup.bgsu.wikispaces.net/file/view/BoyerScholarshipReconsidered.pdf
Scholarship Reconsideredのpdfファイルを見つけましたので、urlを貼っておきます。
以上