少し日数が経過してしまったが、先週末、教育思想史学会の大会が「無事」開催された。台風の襲来も予想されたが、天候にはなんとか恵まれた。記録をよく調べてみる必要があるが、大会参加者総数は154名と、これまでになく多くの方に来場いただいた。感謝!
昨年から慶應義塾大学・三田キャンパスを会場とすることになって、学会史上はじめての試みであるが、第1日目午前からプログラムを開始した。今年もこれを踏襲し、またまた学会史上はじめて、2つのシンポジウムを企画した。「社会の構想と道徳教育の思想—源流から未来を展望する—」(第1日目)と「私学の思想史」(第2日目)である。「道徳(教育)」「私学」もともに、これまでこの学会で正面からはとりあげてこなかったテーマであった。なので、開催前は「反響」について若干の不安があった。しかしそれも杞憂であった。特に前者には、時事的な関心もあってか、非常に多くの参加者を得て、議論も白熱した。私自身は後者の企画と報告にかかわった。参加者数こそ前日に及ばなかったが、私以外のお二人の報告者からは、同志社・新島と慶應・福沢に関する綿密なお話を伺うことができた。討論の時間を充分確保できなかったことが悔やまれるが、今後の課題や展望について多くのきっかけを得ることができた。またシンポジウムに先立って第1日目の昼休みには、、報告者のお一人の米山光儀教授と慶應義塾福澤研究センターのご厚意によって三田演説館、旧図書館展示室などを公開していただいた。これもまた、これまでの大会にない試みであった。
前後するが、第1日目の午前に開かれた4つの自主企画「コロキウム」でも、充実した議論が行われていた。第1日目午前中の参加者だけで100名を超えた、ということも特筆するべきであろう。第2日目の午後のフォーラム2件もそれぞれ熱の入ったご報告や、議論の進め方にも工夫がなされて、討議が深まった。大会企画を盛り上げてくださった関係のみなさんに心より感謝申し上げたい。
また大会運営には、事務局長、事務局長補佐をはじめとしてご尽力いただいた。さらに特に、いつもながら事務局幹事諸君のチームワークと献身的なお働きには、言葉に言い尽くせないほどありがたく思っている。日常的な学会運営をはじめとして、ほんとにいつも「酷使」して申し訳ない。あと1年、よろしくお願いします! またアルバイト陣にも、少ない賃金で2日間長時間にわたり拘束してしまった。あらためて感謝の意を表します。
大会と同時に発行された学会機関誌『近代教育フォーラム』第23号。計374頁は、史上最厚。学会によっては、紀要の背表紙に文字が入らない、などの悩みをもつところもあるように聞くが、当学会の本号は、そんな話とは無縁である。重すぎて、当日の持ち帰りを躊躇したのは、おそらく私だけではない。もちろん重厚なのは見てくれだけではない(はず)である(と信じたい)。もっとも頁数が増えたのは、大会企画を盛りだくさんにした学会理事会(というより、実は会長??)の責任であるが、編集や資金面でさまざまな問題を生じさせてしまっている。編集委員長、事務局長のご尽力のおかげで今号はなんとか刊行にこぎつけたが、次号に関しては刊行や編集の方針を大きく再考しなければならなくなっている。立場上、とても申し訳なく思っている。
ちなみに『近代教育フォーラム』の頁数が増えたのは、単に企画増のためだけではない。3本の投稿論文が掲載されたことも大きい。投稿論文が掲載できない号もあったことを考えると、これもうれしい悲鳴のひとつである。しかも個人的には、そのうち2本が、事務局幹事として学会運営にかかわってくれている院生であること、そしてまた自分の指導する学生であること、率直によろこびたい。あらためて言うまでもないが、幹事だから、会長の指導学生だから査読を通ったわけではない。審査は匿名で行われているし、当学会編集委員会のメンバーは、そんなに甘くはない。幹事だから、指導学生だから、かえって投稿しにくかった状況もあったのでは、とも思う。よく頑張ってくれた。指導教授として心から健闘を讃えたい。