3 「Scholarship of Engagement 」の展開
ボイヤーによる「Scholarship of Engagement」
ボイヤーによると、学問が社会的、市民的、道徳的問題を解決するためには、高等教育機関とコミュニティの強いパートナーシップが要る。さらに、学識の使命、つまりSoE を再主張しなければならない。知識の発見と統合以上に、学識の単独性を防ぐため、ボイヤーは知識応用の学識を提案した。これは単なる「利益を齎すこと」を意味することだけではなく、反省的実践者を意味する。理論から、実践から理論への反省、これが理論をより真実に近づけることを証明する。ボイヤーの結論によると、統合の学識が大学の豊かな資源と、児童、学校、教員と都市が喫緊課題として直面している社会的・市民的・民族的問題を関連づけるということを意味する。SoEは、それ自身のためだけではなく、国家と世界に対する貢献によって自分の価値を証明しなければならない。
SoEの変遷と新しい4Scholarshipの構造
ボイヤーによると、伝統的な研究、あるいは発見の学識は、学術の中心になり、教育機関の発展に不可欠であったが、キャンパスを超えた新たな社会的および環境的な課題の対処するだけでなく、現実に対応する柔軟性を与える必要もある。学識の再定義を、大学の研究ミッションを変更する契機にすることがボイヤーの目当てであった。
応用の学識の考え方では、知識は大学やカレッジで産出され、外界に応用されると考えられていた。しかし、大学がコミュニティに奉仕、貢献する という一方向的なモデルに批判が現れるようになり、コミュニティと大学・カレッジとの協働という双方向的なモデルが提案されるにいたった。このため、 応用ではなくengagementの言葉が用いられることになる。一般的な「Scholarship of engagement」の概念が、発展してきた[1]。
SoEが多様な高等教育活動を論及された混乱状態の起因は、用語の使用にある。SoE概念化の最初の段階では、SoEの基礎価値が定義され、キャンパス·コミュニティ·パートナーシップを通して双方向の相互主義の原則も組み込まれている。この双方向のディメンションは、engagementを「大学から社会へ」の単方向の 奉仕から区別させる。その後、engagementがサービス、公共サービス、または多くの形態のアウトリーチ(cooperative extensionなど)から分立(uncouple)された。2001年までに、学識としてのengagement(engagement as scholarship)の独特な特徴が現れ、SoEがEngagementの一般的な傘概念から区別された。
SoEの高等教育機関での展開-ウィスコンシン大学拡張部[2]の事例を中心に
アメリカでの望ましい大学像とは、大学の学術的リソースを活用して周辺の地域だけでなく、広く社会や世界に繋がり、直接に貢献する知の集合体である。ほとんどのアメリカの高等教育機関には、奉仕ができるという現代的民主主義の精神があふれている。教師も学生も同様に、民主主義的共同体に奉仕しようという願望によって大いに動かされている。これが大学の機能に関する完全に民主主義的な概念である[3]。
SoEに関する多くの初期研究者は、社会と高等教育機関のEngagementの必要性を実証しようとする組織のリーダーである。彼らの観点によると、SoEは、大学の最初の2つの伝統的なミッション―研究と教育に連結されている。さらに、大学は自分の政治的・知的独立性を保護すべき、学識の範囲を広げる義務がある。
『学識の評価』(1997)[4]では、ボイヤーの仕事に続き、学術的な仕事を記録・評価するための標準が提示された。著者らは、教員が学識で評価される場合、ルールを明確にしなければならないと主張している。ウィスコンシン大学拡張部は、この本に基づいて当大学の学識の評価の基準を探り出した。[5]
SoEの定義および評価のプロセスでは、ウィスコンシン大学拡張部は、以下の基本的な概念を採用している[6]:
1.学術的な仕事(scholarly work)は四つの要素を含んでいる。
① 創造的、知的な作業
② その価値を評価できる学者によって審査される(ピア・レビュー)
③ コミュニケーションを通じて、知的歴史に追加される
④ 関係者に評価される
⑤ 学者の仕事はウィスコンシン大学拡張部の定義する4つの要素すべてを網羅しているが、水準を満たそうとして、私たちの評価モデルに見られる厳密な質問項目のすべてが取り組まれる必要はない。評価のための質問は、学者の仕事の質的発展を導き、その審査を行うためのものであり、チェックリストとして用いられるべきではない。
2.学識は、研究、教育、統合、奉仕様々な形として発生する可能性がある。学術的な仕事は、展示会、論文、またはパフォーマンスなど、さまざまな方法で提示することができる。
3.学術的な仕事は協働的かもしれないが、協働的な仕事内での個々の学者の仕事上の貢献(work contribution)は識別(be identified)されなければいけないし、評価の対象とならなければならない。
4.ウィスコンシン大学拡張部が採用している定義と基準は、昇進とテニュアのステップのためにのみ使用されるべきではなく、すべての教員審査、昇進、および階級の変更のために使用されるべきである。
5.学識は、教員の仕事が行われるアプローチである。『学識の評価』(Scholarship Assessed)の著者は、学識が共有されるための鍵(the key to the commonalities of scholarship)は学識のプロセスに、即ち、教員がどのように学識を行うかにあると述べている。
ウィスコンシン大学拡張部では、学識は発展過程として見られている。学内機関内での省察と外部機関との共有が望まれており、それらは学識の発展と、より顕在的なEngaged Institutionになるという究極の目標に貢献する。
今後改善すべきことろ:
1背景
2応用の学識からSoEへの変遷
3SoEを中心としての4Scholarshipの構造
4事例を全面的に述べる
[1]KerryAnn O’Meara, R. Eugene Rice (2005) ,“Scholarship reconsidered”: History and context. In Faculty priorities reconsidered: Rewarding multiple forms of scholarship, San Francisco: Jossey-Bass,17-31
[2] 原文“University of Wisconsin–Extension”
[3] Ernest L. Boyer著、有本章 訳(1996)、『大学教授職の使命』、玉川大学出版部、24
[4] Glassick, C. E., M. T. Huber, and G. I. Maeroff(1997), Scholarship assessed:Evaluation of the professoriate. San Francisco: Jossey-Bass.
[5] Greg Wise, Denise Retzleff, Kevin Reilly(2002),Adapting Scholarship Reconsidered and Scholarship Assessed to Evaluate University of Wisconsin-Extension Outreach Faculty for Tenure and Promotion,Journal of Higher Education Outreach and Engagement, Volume 7, 6
[6] Ibid.,15